第2話 やさしいイワナ

イワナほど釣り人にやさしい魚はいないと思う。

川の最上流に棲むため、谷の精霊とか幻の魚と言われ、釣るのが難しいとされています。

確かに釣るのは簡単ではありませんが、一度釣り損なっても、もう一度チャンスをくれる。

(魚にもよりますが・・・)

ところが、アマゴの場合はそうはいかない。

フライフィシングを覚え、自然の渓流で釣りを始めたころ、アマゴを主なターゲットに釣りをして、アマゴを釣る難しさをいやというほど思い知らされた。

7~8m先に魚の姿を、見つけたと思った瞬間に、もういない。

フライをキャストするたった1回のチャンスすらも与えてくれないのか。

本当にアマゴという魚は、冷たくつれない魚だと思ったものです。

それに引き換え、写真のイワナは3回チャンスをくれました。

対岸の2つ並んでいる四角い石ぎりぎりのところ、1投目のフライをキャストすると、パシャというアタリがあり、合わせると手応えは無く、ロッドはむなしく空を切りました。

2投目はどうだろう?

魚の姿は確認できませんでしたが、もう一度やってみる価値はあると2投目をキャスト。

先程より少し大きな水しぶきを上げフライにアタックがあり、合わせるとフッキング、よしやったと思った瞬間にすぐに針が外れガックリ、これでゲームオーバーか?

間違いなく良型の魚だったのに、フッキングしてしまった以上さすがに3回目は無いだろうと思いましたが、諦めきれず3投目、すると予想に反し、今度はしっかりとフライを咥えました。

大興奮でランディングすると、ネットの中には予想した通り良型のイワナが納まっていました。

こんなに釣り人にやさしいイワナは、めったにいるものではありません。

2回目で釣れたことは何度かありますが、2回目に失敗すればたいていの魚は姿を見ることができません。

後ろ髪を引かれ見られなかった魚の姿を想像し、悶々として次のポイントへとなるのですが、このイワナは2回失敗したにもかかわらず、その魚体を惜しげもなく見せてくれました。

イワナ釣りをしている釣り人なら、こんな経験ありますよね。

このイワナ、何となくやさしい顔していませんか?

                      2013年8月 岐阜県郡上市の渓流にて

 

穏やかでやさしそうな顔をしています。

いかにもイワナが付きそうな場所です。