今から10年程前、夏の終わりごろの出来事です。
その日もいつものように、いつもの渓流へ夜明けととも入渓し、釣り始めました。
木が覆いかぶさる渓流はまだ薄暗く、自分の頭も体もまだ冴えない状態でした。
入渓して間もなく、足元の川の流れに何気なくフライをキャストしたところ、着水したはずのフライを見失ってしまいました。
いったいどこへ行った?
フライが着水したあたりを目で追っていると、少し下流から黒い大きな魚体がヌ~と現れました。
まさか?と思いながら咄嗟に右手でロッドを煽ったところ、ククッと竿先が持っていかれるような手応えがありました。
一瞬で頭も体も目覚め、大興奮で何とかランディングネットに納めた魚は27cmの良型のイワナでした。
おそらくこの溪流でも最高クラスと思われるサイズです。
こんな岸寄りの浅瀬で流れてきたフライを咥えるなんて、信じがたいことでした。
人の気配も感じていたはずです。
このクラスのイワナは、普通大きな石の陰か淵の深いところに用心深く身を潜め、めったに出てこないものです。
何とも不思議なイワナでした。
写真と動画を撮りながらじっくり観察していると、変わったことに気づきました。
このイワナ、目が真っ黒で白目がありません。(魚なので、白目というよりは金色の目の縁取りがないと言った方がいいでしょうか?)
悪魔イワナ?そんな名前が思わず頭に浮かびました。
少し前に見た、スーパーナチュラルという海外ドラマに出てきた悪魔のキャラクターの目が、白目がなく真っ黒だったところから、連想してしまったようです。
悪魔は人間に災いをもたらすものですが、この魚は、私に大興奮と喜びを与えてくれました。
むかし、キャンディーズというアイドルグループの唄でやさしい悪魔というのがありましたが、この魚はさしずめ、やさしい悪魔イワナといったところでしょうか。
こんな目の真っ黒なイワナ、釣れたことありますか?