第29話 2024年 釣行記 ①

待ちに待った今年初めての釣行です。

期待と不安で迎えたこの日、思わぬ展開となりました。

夜明けとともにいつもの川へ入渓。

30分ほどして緩やかな瀬で、エルクヘアカディス13番に反応があり、小振りのアマゴがかかりましたが、バラしてしまいました。

気を取り直して釣りを続行しましたが、ここからが試練の連続でした。

凸凹した川底の石に足をとられ、何度も転倒しそうになったり、覆い被さった木に何度もフライが引っかかったり、おまけにそれらしいアタリも無く、ストレスがたまる一方でした。

今年もよくないかな?

そんな嫌な予感が頭によぎりながら、流れのよれたプール状の所にフライを投入すると、着水と同時にアタリがあり、小振りですが、やっとイワナが釣れました。

何とかネットに納めほっと一息、朝からの試練がやっと報われました。

ところが、その後ドライで釣り続けますが、また沈黙です。

今日はこれまでかと思いましたが、まだ時間は十分あったので、ニンフに切り替えて釣ってみることにしました。

フライはヘヤーズイヤーニンフの12番です。

ドライで一度釣った浅い瀬を丹念に攻めてみると、マーカーに当たりがあり、合わせると手応えが、ちらっと魚体が確認できましたが、すぐにバラしてしまいました。

朝からあちらこちらで魚のいる気配は感じましたが、何か自分の中の歯車がかみ合っていないような、なかなか釣果に結びつかない状況にやるせない思いでした。

とはいうものの、魚がいることが確認できたことで諦めきれず、ここで苦し紛れではありましたが、しばらく封印していたウエットフライを、やっぱり性懲りもなく試してみたくなりました。

(第23話でお伝えした眠りについたはずの私のウエットフライたちですが、フライボックスの中に4本だけ入れてありました。)

フライはシルバーマーチブラウンの10番。

思わぬ展開はここからでした、ニンフで釣り損なった瀬をしつこく流すと、手元にモゾモゾっとした感触があり、続けてラインの先端が持って行かれる感覚がありました、自然に右手でロットを煽るかたちのアワセになったのですが、確かな魚信が、イワナがしっかりとウエットフライを咥えていました。

これがウエットフライフィッシングのアタリなのかと、初めて手ごたえを感じ、魚を釣り上げることができたことに大興奮です。

この瞬間をどれほど待ち望んでいたか、この上ない達成感を感じた瞬間でした。

その後フライをロイヤルコーチマンの10番に変えて巻き返しに落とすと、沈んでもまれたフライを下から浮上してきたイワナが咥えました。

ウエットフライで二匹目のイワナです。

ウエットフライが水中でどのように動き、魚がそのフライをどのように咥えるのか、この目で確認できた貴重な体験でした。

ついにウエットフライフィッシング、開眼したかもしれない、と言ってもやっと片目が開いた程度だと思いますが・・・。

そんなわけで、試練の連続でスタートしたこの日の釣行は、実りの多い結果となりました。

今年こそウエットフライフィッシング、習得できるかもしれません。

次回の釣行への期待に胸を膨らませ、川を後にしました。

 

2024年4月14日 岐阜県郡上市 いつもの渓流にて

 

試練の末、やっとドライフライに出たイワナ

何気なくフライをキャストしたこんな場所にいました。

初めてウエットフライで釣り上げたイワナ、一生忘れないでしょう。

ニンフで釣り損なったこんな場所で釣れました。

流れにもまれたウエットフライを浮上して咥えたイワナ

巻き返しもウエットフライで狙える場所でした。

 

第28話 一番大切なこと

自然の渓流で釣りをする上で、一番大切なことは何か?

ある人は、沢山の魚を釣ること、またある人は、尺を超える大物を釣ることと答えるかもしれません。

私にとって一番大切なことは、何をおいても釣りに行った先から、無事に帰ってくるということです。

自然の中で、思い思いに好きなことをして過ごすのは、この上なく楽しくもあり、癒されるものですが、その反面、思わぬ危険も潜んでおり、大変な災難に見舞われることもあります。

毎年のように、夏になると水の事故で命を落とされたり、冬の寒い時期には雪山で遭難したり、滑落して命を落とされたりといったニュースが後を絶ちません。

楽しいはずの思い出が、一転して取り返しのつかない、悲しい思い出に変わってしまう。

本当に痛ましいことです。

私にも過去に苦い経験があります。

あれはある年の禁漁を間近に控えた日に、釣りに行った時のことです。

入渓して30分ほど経った時、思わぬ事態が起きました。

今ではどんな状況だったのか詳しいことは覚えていませんが、石につまずいて、左足があらぬ角度になったまま派手に尻餅をついてしまいました。

その瞬間、バキッと嫌な音がして、左足首の外側あたりに痛みが走りました。

話には聞いていましたが、これが骨折した時の音か、まさか自分がこの耳で聞くことになるとは思いもしませんでした。

一瞬放心状態になりましたが、あれこれ思案した末、ここは一刻も早く川から上がり、自宅近くの病院へ向かうことが最善と決断しました。

入渓してすぐだったこと、まだ、かかかとをついて歩けたこと、当日が平日で病院の受診が可能だったこと、何より折れたのが左足だったことが幸いして、何とか自力で車まで戻り、病院へ向かうことができました。

病院についた時には左足首は腫れ上がり、あまりの痛さに足をつくことすらできませんでした。

下った診断は、骨折で全治2ヶ月。

「なんてこった」

予想していたことですが、これから先の2ヶ月間のことを思い、目の前が真っ暗になりました。

家族には心配をかけ、職場の同僚には多大な迷惑をかけ、1ケ月後に友人の結婚式に出席する予定でしたが、水を差すような結果になってしまいました。

自己嫌悪に陥り、反省の日々を送りながら治療に通った日々を思い返すと、今でも穴があったら入りたい思いです。

この事件が起きたのは、10年ぶりに釣りを再開して間もなくのことでした。

10年も休んでいた釣り人を、簡単に受け入れてくれるほど、川は甘くありませんでした。

むかし見た、竹野内豊さんと反町隆史さんがダブル主演したビーチボーイズというドラマの中で、マイク真木さん演じるダイアモンドヘッドという民宿のオーナーが、何年振りかでサーフィンを再開して、波に飲み込まれて溺れそうになってしまうシーンがよみがえってきました。

その時「ずっと休んでたやつが、いきなり入って波に乗れるほど、海は甘くねえよな」と言ったセリフを思い出し、胸に突き刺さりました。

本当にその通り、決して自然をなめてはいけません。

ケガが完治した後は、もう一度足腰を鍛えなおし、川へ行くようになりました。

今でも釣りに行くたびに、ハッとする出来事に遭遇することは、毎回のようにあります。

自然のフィールドへ出かけるときは、自分のことはもちろんのこと、大切な人たちのことを思い、どうかくれぐれもご安全に。

 

自然豊かな渓流には、思わぬ危険も潜んでいます。



第27話 シャッターチャンス

釣った魚をできるだけきれいに写真に納めて、いつまでも残しておきたい、そして時々その写真を見て当時の思い出に浸りたい。

それもフライフィッシングの大きな楽しみの一つだと思います。

海釣りの人が、魚拓を取って残しておくのと少し似ているかもしれません。

フライフィッシングを始めたばかりのころは、デジタルカメラは無く、フィルムのコンパクトカメラで、撮ってから現像された写真を見るまでが楽しみでもあり、不安でもありました。

現像された写真を見て、失望したことも数知れません。

実際に肉眼で見た魚と写真との違いに、愕然としたことを今でも覚えています。

腕がよくなかったのが一番の原因なので、仕方がありませんが・・・。

それがデジタルカメラの出現によって、状況が一変しました。

撮ったその場で写真を確認できることもさることながら、素人でもかなりいい写真が撮れるようになりました。

その上、防水機能も兼ね備え、水中で写真や動画を撮ることもできるようになり、写真を撮ることを格段に楽しくしてくれています。

私は、写真を撮るとき一つ決めていることがあります、それは釣った魚とその魚が釣れた場所の写真と動画をセットにして残しておくことです。

そうすることで、どの川でいつどんな魚がどんな場所で釣れたかがわかり、次の年の釣りの参考になります。

釣った時の状況もよみがえってきて、イメージトレーニングにもなります。

釣れない状況が続き、気持ちが沈んだ時、釣れた時の感覚をもう一度呼び起させてくれ、自信を取り戻す手助けをしてくれる記録でもあります。

ただ、魚の写真を撮るときは、ネットの上に横たえるか、手で魚体を支えて撮るかのどちらかで、同じようなアングルの写真になってしまいがちです。

プロの写真家ではないので致し方ないですが、何とか自然な状態でよい写真が撮れないものかと、いつも思います。

写真のイワナは、なぜか水中でじっとおとなしくしていました。

これは、またとないシャッターチャンスと思い、シャッターを切ったところ、今までと雰囲気の違ったなかなかいい写真が撮れました。

この写真は、私にとってベストショットです。

このブログのプロフィールの写真にも使用しています。

いつか、水中で魚が泳いでいくところを撮影できたらなんて思いますが、絶好のシャッターチャンスを逃さないように写真を撮るのは、魚を釣るより難しいです。

いい写真撮れていますか?

2016年9月3日 岐阜県郡上市の渓流にて

 

水の中で頭だけを出し、写真撮ってと言っているようでした。

大きな石と石の間に囲まれた、いかにもイワナが好きそうな場所に潜んでいました。




 

第26話 マイ・フィールド

誰にでもそれぞれ好きな自然の風景があります。

海が好きな人の中には、海を見ていると自分の悩みが小さく思えて元気づけられるとか、またある人は、海に沈んでゆく夕日を見て、その美しさに感動し、涙ぐんだりします。

私は海を見ると、足が届かない水深の深さを思い、恐怖を感じ、沈んでいく夕日を眺めていると、何かの終わりを連想してしまい、寂しい気持ちになります。

同じ自然の風景を眺めても、感じ方は人それぞれです。

私にとっての好きな自然の風景は、山の奥の渓流です。

底石が透き通って見えるほど澄んだ流れを見ていると、心が洗われるようです。

川の流れる音も心地よく耳に響きます。

緑に囲まれた渓流にいると、いわゆるマイナスイオンのせいか、この上なく癒されます。

パソコンの画面を通して渓流の流れを見ているだけで、気が休まることさえあります。

前世は渓流魚だったのかもしれない。(なんて思ったりもします。)

フライフィッシングのフィールドは無限にあります。

管理釣り場から始まり、川の本流筋、渓流、山岳渓流、源流、湖、海、果ては海外のフィールドまで本当に幅広いです。

狙う魚も川ではヤマメ、アマゴ、イワナニジマス、ブラウン、海に至ってはシイラ、ボーフィッシュなんていうのも釣れると聞きます、海外に行けば想像を超える大物に出会えることもあるでしょう。

釣り人が好きなフィールドで、好きな魚を相手に、思い思いのスタイルで楽しめるのがフライフィッシングの良さでもあります。

私はフライフィッシングを始めた時から、渓流でアマゴ、イワナを釣りたいと決めていました。

木々に囲まれた渓流には、何か神秘的なものを感じます。

そして、そんな渓流に棲む魚たちには、何とも言えない美しさがあります。

渓流に来るたびに、今日はどんな魚に出会えるかと考えながら釣りをするのは、何とも言えない面白さがあります。

釣れないで帰ることもありますが、そんな日は次回の魚との出会いを期待し、こんどこそはと思わせてくれます。

時には川辺に住む生き物たちとの思いがけない出会があったり、それもまた楽しいものです。

幸いクマに遭遇したことはありませんが、出会い頭に突然ニホンカモシカが現れたときはドキリとしました。

シカと遭遇すると、しばらくこちらをじっと見ていることが多いですが、何を考えているんでしょうか?

確か映画スタンドバイミーに出てきたシカもそうでした。

もし言葉が通じるものなら聞いてみたいものです。

どんなフィールドでどんな魚を釣るのが好きですか?

 

底石が透き通るほどきれいな流れ、心が洗われるようです。

マイナスイオンで溢れた渓流は神秘的でもあります。

釣りの途中、物音に気付きふと前を見ると、じっとこちらを見ていました。

石に足を乗せようとふと見ると、こんな先客が。

 

第25話 いつもとは違う川で

ここ10年程、毎年同じ川に通いつめ釣りを愉しんでいましたが、この年、ほかの渓流に行って釣りをしてみたいという思いが芽生え、この日はいつもより少し遠くの渓流まで足を延ばしました。

岐阜の北の方に位置する庄川は魚の放流量も多く、渓流釣りのメッカで、フライフィッシャーもよく訪れる川です。

この川の支流で御手洗川という渓流の情報をガイドブックで見て、いつか行ってみたいと思っていましたが、やっとこの日実現しました。

初めての川を釣るとき、気を付けていることがあります。

入川口がどこにあるか?これは私にとって非常に重要です。

釣り上がって行った先に入川口があり、川から上がることができればいいのですが、無ければまた釣った距離をそのまま川通しで戻らなければなりません。

若いころなら釣り下って戻る余裕もありましたが、年を重ねた私にはかなりの重労働になります。

この川は比較的平坦で舗装された道沿いを流れていたので、その心配はなさそうでした。

岐阜の川はアマゴの印象が強いですが、この川あたりから以北になるとヤマメになります。

はたして初めてのヤマメとの対面はあるのかどうか、期待と不安で川を訪れたことを今でも覚えています。

初めて訪れたこの日、運よく初めてのヤマメを釣ることができました。

まだ稚魚といった方がいいくらいの小さいサイズでしたが、ヤマメが釣れる川に初めて来てヤマメを手にできたことがうれしかった。

実際に釣れたヤマメは朱点がないだけであとはアマゴと変わりません。

この朱点もなんでアマゴにあってヤマメにないのか不思議です。

この後2匹のイワナも釣りましたが、釣れた場所はいつもの川のイワナとはちょっと違っていました。

巻き返し、石回り、淵などイワナが付きそうなポイントを探りましたが、まったく反応がありませんでした。

予想に反して釣れたのは、浅い瀬のそれも岸よりの一番浅い流れの筋です。

特にイワナが身を隠せるような大きな石もありません。

イワナが真っ昼間にこのような浅い瀬で、危険をさらしてドライフライに出た経験は今までなかったので、意外でした。

釣果としては初めて訪れた場所だったので、上々ではなかったかと思います。

何より川が違えば同じ魚でも付き場が違ったり、アマゴがヤマメになったりすることを感じられた、なかなか興味深い一日でした。

たまには他の川へ行って釣りをするのもいいですね。

2015年6月  岐阜県高山市、庄水系・御手洗川にて

 

初めて釣ったヤマメ、大きさはともかく貴重な体験でした。

初めてのヤマメはこんな場所の流心にいました。

初めての川で釣れたイワナ、うれしい瞬間でした。

立て続けに同じ場所からもう一匹、なかなかないことです。

二匹のイワナはこんな浅瀬の岸寄りから出ました。

 

第24話 ニンフフィッシング

今回はニンフフィッシングです。

フライフィッシングといえば、ドライフライフィッシングというイメージが圧倒的に強いかと思いますが、フライフィッシングを始めてから2年間ぐらいは、管理釣り場ニジマスをひたすらニンフフィッシングで釣っていました。

この時点では、フライフィッシングにおいてドライフライフィッシングは難しく、一番釣れるのはニンフフィッシングなんだと思っていました。

数々の管理釣り場を釣りわたり、フライのパターンやおもりの付け方、棚の取り方、マーカーの選定など、自分なりの必釣パターンを確立していきました。

ところがです、自然の渓流で野生の渓流魚を狙うようになって状況は一変します。

確立したと思っていたやり方が、まったくと言っていいほど通用しなかったのです。

自然の渓流では、ドライフライの方がニンフより断然反応が良かったのです。

渓流魚というのは、捕食している餌の70%は水中でとっていると言われていたので意外でした。

フィールドと対象魚が変わると、その釣法まで変わるということを実感しましたが、なぜドライの方が釣れるのか?

いまだに明確な答えは見つかりません。

自然の渓流で釣りはじめたころは、アマゴを対象魚にしていましたが、ニンフで釣れたのは記憶に残っている限りでは、1回しかなかったと思います。

私にとって、アマゴはニンフで釣るのは難しい魚という存在になりました。

イワナに関しては、ニンフで釣れる可能性を見出すことができています。

これはある意味、興味深い事でした。

イワナを対象魚にして釣りをするようになってから、ある時、一度ドライフライで釣ったところをもう一度ニンフで釣ってみるという、いつもとは違った試みをしたことがあります。

その結果釣れたのが写真の2匹のイワナです。

どちらも釣れた場所は、一度ドライフライで狙っている場所です。

ドライフライで釣れなくても、ニンフなら釣れる可能性があることをこの2匹が証明してくれました。

別の解釈をすると、先行者がいても釣り方によっては釣りになるということかと実感しました。

その後、ドライで反応がなくなった時、ニンフに切り替えて何度か魚を手にしています。

今では、私にとって渓流のニンフフィッシングは、ドライで釣れなくなったときの奥の手といった位置づけでしょうか。

なぜアマゴはニンフでは釣れなくて、イワナはニンフで釣れるのかはわかりませんが、ニンフフィッシングにはニンフフィッシングの出番があると思えるようになりました。

2013年5月 岐阜県郡上市の渓流にて

 

ドライフライで釣った後にニンフフライで出たイワナ

ドライで出ないこんな底石が多い場所が、ニンフの出番のようです。

これも同じ日にドライで出なかった場所でニンフに出たイワナ

水深のあるこんなプールも、ドライで出ないときニンフで狙うといいことがあるかも・・。

 

第23話 ウエットフライフィッシング

ウエットフライフィッシングって難しくないですか?

写真のイワナは、私にとって唯一自然の渓流で、ウエットフライで釣れた魚です。

フライフィッシングを始めたころ、ウエットフライフィッシングというのは、ある程度川幅があって平坦な里川で、対岸に向かってフライをキャストし、下流に向かって扇型に満遍なく川を横切らせ下っていくスタイルが主流でした。

小渓流で釣りをしている自分には、一生使用することのない釣法だと思っていました。

それが、渓流でドライフライのようにアップクラスでフライをキャストし、ナチュラルドリフトして釣る方法が紹介され、自分もいつかは試してみたいと思うようになりました。

入門書を読み漁り、入門DVDを何度も見直し、果てはネットでウエットフライフィッシングをされている方の体験談を見たりして知識を収集しました。

そして使用パターンを選定し、ウエット用のマテリアルを揃えタイイングです。

これがやってみるとなかなか難しい、取り付けるマテリアルの数が多いため、太めのスレッドで巻いていくと、ヘッドが異様に大きくなってしまう。

もっと難しいのは、ウイングの取り付けです。

マテリアル自体に壊れやすいものが多く、取り扱いが難しい上に、フックに対して真っすぐ取り付けるのは至難の業です。

何とかそれらしい形に巻けたいくつかのフライを携え、渓流で実釣です。

実際やってみると、入門書や入門DVDのようにうまく行きません。

ドロッパーなんて言うシステムを自分で作って試したりもしました。

狙うポイントはわかっても、沈んだフライが水中でどのような動きをしているのか、全くイメージが湧きません。

目でフライの動きを追うことができるドライフライとは大違いです。

釣れたイワナの話に戻りますが、この時はドロッパーシステムで、リードフライにシルバーマーチブラウンの12番、ドロッパーは確かロイヤルコーチマンの10番だったと思います。

この場所は、白泡が立った上流に向かってキャストし、ナチュラルドリフトを意識して大石のある下流まで流してきました。

流し切ってフライを回収しようとロッドを煽ったところ、ククッとロッドが絞り込まれるようなあたりがありました。

釣り上げてみると、リードフライのシルバーマーチブラウンの12番を写真のイワナが咥えていました。

釣れたというより、知らないうちに釣れていたという感じです。

ウエットフライで魚を釣り上げるという感覚が、どうしてもつかめません。

魚を釣って、こんな複雑な気持ちになったのは初めてでした。

その後、ウエットフライフィッシングは封印することになります。

自宅に残ったウエットフライたちは、フライボックスの中で出番の無いまま眠りにつくことになりました。

活躍の場があるとすれば、管理釣り場で大型のニジマスを狙うときぐらいでしょうか。

そう思いながら、ドライフライの方が釣れるし面白いと自分を慰め、次の釣りへ行ったものです。

それでもまたいつか性懲りもなく、ウエットフライを持ち出すんだろうなあと思います。

いつかウエットフライフィッシングのコツ、つかめる日、来るかな?

2016年5月 岐阜県郡上市の渓流にて

 

ウエットフライで釣れてしまった唯一のイワナ、ある意味貴重です。

ドライでは出ないこんな緩いプールのようなところに潜んでいました。

眠りについた私のウエットフライたち・・・お・や・す・み・な・さ・い。またいつか・・