mata’sフライフィッシング体験記

このブログは、私がフライフィッシングという釣りを通して遭遇した、様々な出来事を綴った体験記です。

第8話 尺イワナ

渓流釣りをする釣り人なら一度は釣りあげてみたい憧れの存在なのが尺イワナ、釣ろうとしてもなかなか釣れるものではありませんが、いつかは手にしたいですよね。

私もそんな日を夢見ていましたが、ホームグラウンドにしていた釣り場は小渓流であるため、それは夢のまた夢だと思っていました。

しかし、その日はある日突然やってきました。

当日は、自宅を出る時から雨模様で、釣り場に向かう道中だんだんと雨足が強くなってきていました。

いつものメインの釣り場は、落差の大きな小渓流で大雨が降ると短時間で増水する可能性があり、状況が気になりました。

現地に着くと、案の定前日からの雨の影響もありかなりの増水で、川に立ちこむのもむずかしいような状況でした。

この場所を諦め別の釣り場へ行くことに決めました。

車を走らせ目的の釣り場に近づくにつれ、次第に雨も小雨になり、到着し身支度を整えて入渓する頃には雨も上がっていました。

この釣り場はいつもメインの釣り場に行く前に立ち寄る程度で、釣れるサイズも20cm前後、数も釣れていなかった場所でした。

入渓して1時間、全く反応が無く、今日は期待できそうにないかなと思いながら少し大きな淵のポイントに辿り着きました。

こういうポイントは本来なら淵の下流側を釣ってだんだん上流へ攻めていくのですが、今まで反応があったことが無かったため、この日はいきなり淵の最上流部の落ち込みの際にいきなりフライを投入してみました。

フライが着水したと同時に、パシャという小さな飛沫が上るほどのアタリがあり、合わせてみると竿先が持って行かれるほどの感触、一瞬にして体に緊張が走りました。

これは今までにない大物だと確信しました。

ロッドを立てると大きくU字型に撓り、魚を引き寄せようとしますが、なかなか上がってきません。

大興奮、緊張を抑えることができず、心の中で何度も「バレるな、バレるな」と祈りながら、姿を現したイワナは見た目にも間違いなく尺はあるとわかりました。

何とかネットの中に納めほっと一息つき、イワナを撮影できるところへ移動し、動画と写真を撮りながらいつもより長い時間じっくりと観察しました。

私の初めての尺イワナは色白でスマートで、おそらく顔つきから見てメスなのかな?と思わせる雰囲気でした。

メジャーで測ってみると、なんと33cm。

この先、これ以上のイワナに出会うことは無いかもしれません。

リリースする瞬間は、名残惜しい気持ちで一杯でした。

水の中で手を離すと、尺イワナはゆっくりとまた元の淵へと消えていきました。

初めての尺イワナ、忘れられないですよね。

                      2015年5月 岐阜県郡上市の渓流にて

 

33cm、ネットが小さく見えます。この川でこれ以上のサイズは二度とないでしょう。

初めての尺イワナは色白でスマートな女性のような印象でした。

いつもは反応のないポイントで、思いがけない出会いでした。