第4話 黄金イワナ

釣りキチ三平という漫画、もちろん知っていますよね。

その中のフライフィッシング編で、ゴールデントラウトという魚が出てきました。

架空の魚だと思っていましたが、最近になってネットで検索したところ、カリフォルニアに実在していました。

パーマークがある黄色いニジマスという感じで、何とも個性的です。

実は私の通っていたいつもの川にも、黄金のイワナが実在しました。

写真のイワナ金色に見えませんか?

目が少し出ていて顔付きも変わっています。

ヤマトイワナの中に金色っぽい個体がいるのをネットで何回か見た記憶がありますが、それとも違う雰囲気です。

このイワナは黄金だけに手にするまで、一筋縄ではいきませんでした。

黄金イワナは、大きな石の下の洞窟のようなところに潜んでいました。

こういうところは、ピンポイントでフライを洞窟の穴の中に放り込むだけの技術が必要だと思っていたので、今一つ攻め切れていないポイントでした。

この時は、穴を塞ぐように蜘蛛の巣が張っていました。

いわゆる竿抜けのポイントというやつです。

間違いなく誰もまだ釣っていないという確信があったので、今日はじっくり時間をかけて攻めてみようと決めました。

1投目、当然のごとく蜘蛛の巣がフライとティペットの先の部分に絡み大変なことに、フライを回収し蜘蛛の巣を取り除くのに一苦労。

気を取り直しての2投目、穴の入り口のクモの巣はきれいに取り払われ、キャストしやすい状態になったものの、フライはやや左に逸れ、大きな石にあたり跳ね返され、無情にも手前の水面に落下してしまいました。

3投目はやや右に逸れ、またもや石にあたり水面に落下、穴の中にはなかなか入りません。

4投目、キャストしたフライは穴の少し手前に着水、その後吸い込まれるように穴の中へ・・・?

そうか!

この穴の中は目には見えませんが、反転流になっているため、ピンポイントでフライを穴の奥へ放り込まなくても、手前に落としその流れにフライを乗せてしまえば自動的に穴の中へフライを運んでくれる。

よし、これならいけるかも?

狙いを穴の手前の水面に定め5投目、フライは穴の少し手前に着水しゆっくりと穴の中へ、次の瞬間フライは水中にフッと消えてなくなりました。

もしやと思い、ロッドを煽ると右手に確かな手応えが、やっぱり魚がいた!そして大興奮でランディングしたのがこの黄金イワナです。

25cm程の良型でフライをがっぷり奥まで飲み込んでいました。

このイワナが水面を割って姿を晒すことなく、水中で身を隠したまま、口で吸いこむようにフライを捕食する光景が浮かびました。

自分で言うのもなんですが、この時フライは、イワナから見てごく自然に流すことができていたのだと思います。

竿抜けのポイントを丹念に攻める、そしてフライをナチュラルドリフトさせることの大切さを改めて教えてくれた黄金イワナとの出会いでした。

竿抜けのポイント、難しいですが根気良く狙っていればいいことありますね。

                      2014年5月 岐阜県郡上市の渓流にて

 

金色っぽい魚体、自然が生み出す色は何とも不思議です。

姿を見せず吸い込んだフライは、がっぷりイワナの口の中へ。

石に囲まれた穴の奥には良型イワナが・・・